土屋耕一さんという不世出のコピーライターの方がおられます。
もう亡くなられてしまったのですが、
コピーライターがお洒落な職業のひとつと世の中に認知される前から、
誰よりもお洒落なコピーライターの第一人者のひとりでいらっしゃいました。
いや、お洒落というより、粋といったほうがいいかもしれません。
しかも、江戸っ子の粋です。
その土屋耕一さんがあるアメリカの広告のキャッチコピーの
“翻訳”のキャッチコピーをつくられたときのことです。
その広告のキャッチコピーは、「DRINK」でした。
直訳すれば「飲め」ではないですか。
でも、それではキャッチコピーにはならない。
「DRINK」が表現しているのは、もっと深い意味があるはずだと、
土屋さんは考えに考え抜かれたすえ、こんなキャッチコピーを書かれたのです。
「乾きに」
アメリカのダイレクトレスポンスマーケティングのキャッチコピーを
安易に直訳して紹介し、さらにそれをスワイプしろなどと
呆れた戯言をいっている輩には、この深さは理解できないでしょう。
「DRINK」を「乾きに」と翻訳できるのは、コピーライターだけの特権です。
凄いなあ、コピーライターって。と思わせてくださる、
土屋耕一さんに改めて合掌です。